弁護士 合田雄治郎

合田 雄治郎

私は、アスリート(スポーツ選手)を全面的にサポートするための法律事務所として、合田綜合法律事務所を設立いたしました。
アスリート特有の問題(スポーツ事故、スポンサー契約、対所属団体交渉、代表選考問題、ドーピング問題、体罰問題など)のみならず、日常生活に関わるトータルな問題(一般民事、刑事事件など)においてリーガルサービスを提供いたします。

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「日本山岳・スポーツクライミング協会の常務理事に就任して」

1 5月28日に公益社団法人 日本山岳・スポーツクライミング協会(以下、「協会」)の常務理事に就任させていただき、2ヶ月弱が経過しました。

 本欄( 「フリークライミング、スポーツクライミングの国内統括団体について」 )でも書かせていただきましたように、昨年度まで、協会はスポーツクライミングの国内統括団体(National Federation、以下「NF」)であるにもかかわらず、名称にスポーツクライミングの名がなく(従前は「日本山岳協会」)、また理事会には山岳を専門とする役員ばかりでスポーツクライミングを専門とする役員が1人もいないという状況でした。

 ところが、国内外のスポーツクライミングの人気を背景に、昨夏にスポーツクライミングが2020年東京五輪の追加競技となったことを契機として、スポーツクライミングのNFである協会を取り巻く環境が激変しました。この事態に対応すべく、協会は、国際連盟( International Federation of Sport Climbing )の要請に基づき、4月1日に名称を「日本山岳・スポーツクライミング協会」と変更し、また5月28日の総会において、スポーツクライミング系の役員として4名の就任が承認されました。私は、そのスポーツクライミング系の役員の1人です。

 

2 実際に協会の内部に入ってみると、予想どおり課題は山積していました。

 協会の予算は、2015年度は約1億4000万円であり、2年後の今年度(2017年度)には約2億7000万円となり、約2倍となっています。予算の大半は、補助金や協賛金によりますが、NFの運営のための資金としては少額とは言えない額になっているにもかかわらず、決して協会の組織運営は順調とは言えない状況です。

 この問題の核心は、協会が予算規模に合ったガバナンス体制が構築されていないことに尽きると感じています。先に述べたように、私はスポーツクライミング系の役員として協会に入りましたが、最重要の役割は、協会全体を見渡した上でのガバナンス体制の構築だと考えています。現在は、その役割を中心的に担うガバナンス委員会の設置について提案しており、次回理事会に諮ることになっています。

 

3 ガバナンス体制の構築は最優先の課題ですが、その内容は広範囲にわたるため、もう少し具体的な課題について考えてみたいと思います。

 昨年9月に本欄(「スポーツクライミングの隆盛と今後の課題」 )において、①若手クライマーの啓発、②アンチ・ドーピング、③東京五輪のスポーツクライミングのルール、④NFのあり方、⑤スポーツ障害の5点について指摘させていただきました。

 このうち③東京五輪におけるスポーツクライミングのルールについては、既に決定されています。更なる課題は、2024年、2028年の五輪にスポーツクライミングが五輪競技として残れるか、そして、残れた場合にはそのルールをどのようにするか(東京五輪のルールが三種目混合であり特殊であるため、現在ワールドカップで採用されている単種目ごとのルールに準拠するか等)、ということになるでしょう。

 ①若手クライマーの啓発、②アンチ・ドーピング、⑤スポーツ障害については、現に協会でも対策が講じられているか、あるいは、こらから講じられてようとしていますが、より一層の充実を図らなければなりません。

 ④NFのあり方については、本欄で、フリークライミングの両輪であるアウトドア(岩場)でのクライミングと人工壁でのクライミングを統括する団体が必要であると主張させていただきました。現状においては、協会の統括するクライミングから岩場でのフリークライミングが抜け落ちているため、今後は協会が岩場でのフリークライミングをも統括し、フリークライミングの発展に寄与すべきであると考えます。

 

4  私がNFの役員入りをしたことで、これまでアスリート側・クライマー側で仕事をしてきたこともあり、「魂を売りましたね」というようなことを言われることがあります。

 協会入りする前からそのように言われることは十分に予想できましたが、アスリートファースト(クライマーファースト)という私の姿勢は変わりません。

 ただし、アスリートファーストという言葉は多義的であり、「長い目で見ればアスリートのためである」とか、「間接的にアスリートのためである」とかいった意味でも使われます。鋭く対立する者が、双方とも、その意見の根拠としてアスリートファーストを挙げていることも見受けられます。このように、アスリートファーストという言葉は便利な言葉でもある反面、真意の伝わりにくい言葉でもあると言えます。

 フリークライミング(スポーツクライミングを含む)界にとってのアスリートファースト(クライマーファースト)とは何なのか、その内容を具体的に見極めつつ、常に自問し続けていく必要があると考えています。

 

 

 

 

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